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建築設計事務所ヒロシの書評?読書感想です^^
on 2012年9月25日火曜日
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チャールズ・イームズ
1961年生まれの僕らの世代の男子の小学生といえば、「コンバット=サンダース軍曹」&「プラモデル=1/35ミリタリーシリーズ」って感じで、YouTubeもついそんなのを検索することも。
そんなのを見てると、ちょっと、面白いのがあった。
(↑再生ボタンを押すとイームズのあたりから再生します。)
BBC The Genius Of Design 3 of 5 Blueprints For War 2010
この特集は、第二次世界大戦前後のマス・プロダクト・デザインのデザインの再評価の特集である。
ピーター・ベーレンスによるAEGのやかん,ポルシェ博士によるフォルクス・ワーゲンのビートル、イギリスのサブマシンガン・ステンガン、爆撃機モスキート、そして、ドイツのタイガーⅠ型戦車とソ連のT34戦車。さらにアメリカの大量生産の力を象徴する爆撃機・輸送船、またドイツに戻り機関車を取り上げている。
「ピーター・ベーレンスによるやかん」を除けば、小学校の帰り道、プラモデル屋で、戦車と戦艦と戦闘機・爆撃機の展示品を眺め、ついでにNゲージに目を凝らし、最後はおもちゃ屋でモデルガンを見て帰る、まさにそれをビデオでにているがごときである。
マス・プロダクト・デザインのデザインの再評価とはいえ、BBCによって、取り上げられた、兵器が中心であり、さらにヒトラー時代のドイツを代表するタイガーⅠ型戦車を、大きく取り上げるなど、僕らの世代から見ると、禁忌・タブーに一歩踏み込んでいるように思える。
そのBBCの大胆不敵さ、勇気には感服し、隔世の感を思う。戦争を知らない僕らとはいえ、露骨にドイツ兵器の評価となると、なかなか表では言えない。だから、無邪気な子供心に、だからこそ、心躍らされるデザインだったのことも思う。
取り上げるプロダクト・デザインの兵器の種類には、異論もあるかな?
イギリスのサブマシンガン・ステンガン?やっぱりコンバットでドイツ歩兵が持っているMP40(僕らはシュマイザーといったが、これはこのシリーズの設計者の名前らしい)とか、サンダース軍曹の持っていたトンプソンでしょ!とか、
戦車なら、タイガーⅠ型じゃなくて、Ⅴ号戦車パンターでしょ、いやいや、最終型のキングタイガーでしょとか、
またまた、船なら、取り上げられた貨物船LibertySipじゃなくて、日本が苦しめられた、というか、コテンパンにやられた空母群とか、好みによる異論はあるかもしれない。
しかし、ここには、マス・プロダクト・デザインの対立軸である「品質と量」の概念を当てはめている。「ドイツの質に対し、英米の量」の概念である。そして、「品質と量」の双方を追うには、「徹底的簡素化」の必要性の用件が、加わるので得ある。
サブマシンガンでいえば、MP40は、木製の部分はなく、すべて金属製で、大量生産を意識しているようには見えるが、どこか装飾的だ。銃口のボディーの丸みがかったデザイン、高度補強かもしれないが弾倉のライン、折りたたみ式銃床という技巧的構造。そこには質へのこだわりがみえる。
一方のトンプソンは角ばったデザインは、無骨でそっけなく、まさにマス・デザイン。しかし手で持つ部分と銃床は木製で、「徹底的簡素化」までは、気の回らないあまり思考的なそっけなさ。というわけで、ステンガンというわけだ。
戦車もそうだ。大量生産のシャーマンやT34に比べ、品質のタイガーⅠ型。サスペンションや走行力、重すぎることや幅が広く輸送も大変!っテなこともあるようであるが、強力な火力と分厚い装甲で群を抜いた。傾斜装甲(装甲を斜めにして被弾の威力を和らげる)もどこ吹く風、垂直な分厚い鉄板を溶接して覆う。
それによって生まれるシンプルな形態。あくまでも、火力と鉄板の品質にかける。ヒトラーの精神でもあったのであろう。
ここにあげられた一方のT34は、大量生産の代表でもあろう。ドイツは狭い国内で作るしかない、一方ソ連は東部戦線で激しい戦闘があろうとも、背後の工場で続々と作り続けたのだ。調べてみると、総生産台数は、タイガーⅠ型は1,355輌、T34は57,000輌。ゲゲ、凄過ぎ。
船は、貨物船が取り上げられ、ブロック工法が取り上げられていた。BBCだから、ドイツのUボートからの攻撃をかいくぐりイギリスに大量に物資を運んだ、貨物船LibertySipを選んだ!!と思っていた。
でも、これも調べてみると、ブロック工法と溶接接合により大量生産されたという。戦時標準船といって「1941年から1945年までの短期間のうちに2,712隻が急速建造」という。リベット接合から溶接接合への技術開発も、日本海軍でも大問題を引き起こした課題で、結局戦艦大和もリベット接合に戻った、当時の大きな技術的課題であったであろう。
ということで、マス・プロダクト・デザインをテーマにしているここでは、貨物船LibertySipは、妥当な例示なのであろう。
日本が、航空母艦戦略にいち早く目をつけながら戦艦という「質」に固執したのに対し、アメリカ・連合国の「量」を追求する戦争に負けた。国土の広さというバックボーンをフルに使いながら、「量」という目的のために「技術革新」と「徹底的簡素化」という基本思想が伺える。
これがそのまま、タイガーⅠ型に代表される「ドイツの質」と、「英米の量」と共に「品質と量」の双方を追う「徹底的簡素化」の思想の対比に、直接的に重なる。
案外、現在にもこれは重なるのではないだろうか。
「顧客満足・CS=Customer satisfaction」を充足させる目的のもとには、グローバリゼーションという手法を使って「量」を追求する方法をとる。「顧客満足・CS=Customer satisfaction」と「量」の双方を追求するためには「徹底的簡素化」・コストダウンが図られるのだ。
その結果は・・「質」の敗北?「格差社会」?「ポピュリズム」?
「マス・プロダクト・デザインのデザインの再評価」といって、私なりにあまり分析的に話を進めると、つまんなくなった!!
・・無邪気な子供心でみたほうがデザインとしては楽しい。動いて、機能的で、作るのにも工夫があって・・これには邪心がない。
お決まりで、ずいぶん話が長くなってしまった。本題・・
ここでの注目はこのビデオの一番最後だ。イームズの家が出てきて、「Lounge Chair Wood(LCW) 」が紹介されている。
最初が「ピーター・ベーレンスによるやかん」という民生品なら、最後も椅子という民生品で、番組としての収まりもいいのかもしれない。
この椅子のよく使われる名称は「Eames Plywood Lounge Chair(LCW)」らしいが、訳して、「イームズのベニヤ板ラウンジチェア」?はちょっといいすぎか、「合板ラウンジチェア」ぐらいかな。
もともと、これはちょっと気になっていて、ベニヤ板という、安ーい材料を、ラウンジ用として、座面の低い椅子として使っている。足から、背を支える骨からずべてベニヤ板だ。しかし、どこか、気品を感じさせる。ジャン・プルーヴェの椅子も合板製であるが、合板は、座と背もたれのみで、足や構造は、木製かスチールだ。
このようなデザインがどこから出てきたのか、気になっていた。
ところが、この疑問が一気に解決する。・・これだ!!
「戦争負傷者のための足の添え木」
当時はギブス代わりに使っていたのであろうか、負傷の一時的な添え木なのであろうか。足へのフィットを考え、合板に切れ目を入れて微妙なカーブを出そうとしている。スリットは、包帯を巻くためか、軽量化のためか・・ここら辺はよくわからないが・・
とにかく、この添え木も見れは、一目瞭然、何の説明も要らないであろう。
負傷者の足にやさしくフィットし、固定するためのベニヤ板(合板)製の添え木を、そのまま、くつろぐ人に、フィットさせてだけ??なのだ。
素材へのこだわり、素材と機能性の合致へのこだわり!!。もちろん機能には経済性・生産性の視点も加わることもあろうが、まさしく、これがイームズの原点だあったのを証明する番組の1シーンだあった。
続き→(「Eames Lounge Chair & Ottoman」)
イームズ「Lounge Chair Wood(LCW)」リプロダクト品の一覧
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